2008年02月09日

狂言万作の会--レポ--(2/8)

栃木県総合文化センターにて、「万作の会」観てきました♪
本日の曲は「川上」と「棒縛」。

構成は以下の通り。
第一部:狂言講座・小舞
第二部:狂言「川上」「棒縛」



では、簡単なレポをば。。


今回は一階右サイド前から8列目のS席でした。
本舞台側に近くて、目線もちょっと舞台より高めでとても見やすかったです。
能舞台のつくりについては↓
http://www.the-noh.com/jp/sekai/stage.html


まず最初に、石田幸雄氏による狂言講座。・・の前に主催者挨拶だったかな・・。今回は館長さん挨拶ではなかったので、最初に挨拶をなさった方が誰なのかよく分からなかったのですが・・まあ多分主催者挨拶のようなものでしょう(汗

仮設舞台に(当然ながら)靴を脱いで登場した主催(?)の方。
舞台袖に来るのかと思ったら普通に切戸口から本舞台に登場だったので少々動揺しました(悪い意味ではなく)。そっちか〜!みたいな。。

そして簡単な舞台解説。
今回は狂言だけの曲なので、能役者(が舞台から落ちないために)に必要な目付柱は設置せず、笛柱、シテ柱、ワキ柱の3本のみ設置。
(これは多分、目付柱に演者が隠れてしまって見えないことがあるからではないかと・・。)
舞台の寸法は東京の能楽堂と同じだそうです。
でも橋掛かりは少々短い気がしましたが・・どうなんでしょう。
右サイドからだったからそう見えたのかな?
(能舞台の用語については上記サイト参照)


それから演者についての御噺。
万作先生の人間国宝認定の事や、狂言十八選の事、
さらには萬斎先生の鞍馬天狗の話も!
「昨日もご覧になった方もいらっしゃるでしょうか、颯爽と現れてますね、萬斎先生の鞍馬天狗。」という内容の事をおっしゃってました(笑)
この話が出た瞬間、つい顔がにやけてしまった人はあの会場にどれ程いただろう・・苦笑

そういえば野村狂言座一行は、昨日は宮崎で公演を行ってそれから栃木にはるばるやってきたそうです。そして明後日ははるばるワシントンで公演・・・という話です。超多忙のなかほんとにお疲れさまです;
・・・しかし凄いエネルギーですね。。


次。石田幸雄氏による狂言講座。
演目の簡単なあらすじと見所、狂言についての簡単な知識などが中心でした。
・狂言は静かに演者が入場して始まる(名乗りまで無言)
・役は自己主張しない→みんな「この辺りの者」と名乗る。だから栃木なら「栃木の者」、ワシントンなら「ワシントンの者」になっちゃう・笑
言い換えれば変幻自在。
・後見は「いるけどいない」。座ってて何もしてない人は、登場人物だったとしても「いるけどいない」。「いるけどいない」人は見なくていいよーという話・笑
などなど。

去年と同じような話もありましたが、今回新鮮だったのは「小舞」があったこと。
今日演じられる「棒縛」では、棒で手を縛られた太郎冠者、縄で手を縛られた次朗冠者が、酒盛りをしながら舞を舞うのですが、それは縛られたままやるから本来の舞がどんなものか、知らない人は分からない。
だから本来の舞を狂言講座で見せちゃおう!と、そういった趣向でした。

此処で舞われたのは「七つ子」と「暁」という小舞。
舞はどちらも高野和憲氏。地謡は石田幸雄、月崎晴夫、岡聡史。(石田氏は扇の代わりに解説用のマイクを脇に置いて・笑。いえ、ちゃんと扇出してましたよ)

「七つ子」は、小さい娘がお婿さんが欲しいと言いました・・という内容の謡だそうですが、何言ってるのかよく分かりませんでした。(石田氏も「謡ってる私も半分くらいしか分かってません」とおっしゃってましたが・笑)
でも、舞の所作はとても綺麗。音程も好きです。構えも格好良かったな。

「暁」は、女と夜を過ごした男が、暁になったから帰らなければならない。しかし女は帰らないでと袖に取り付く。という色っぽい内容。これを男性的に舞っている。ある人はこれをフラメンコの様だと評したらしいのですが・・・私にはどの辺がフラメンコなのかさっぱりです。
たしかに「七つ子」よりはテンポも早いしリズミカルではありますが、
どう見たって小舞じゃん・・・みたいな。
まあ、フラメンコみたいに、決めるとこはしっかり決めていて格好良かったのは確かかな。

あー、でも兎歩(へんばい)はフラメンコに派生したっていう話は聞いたことあるな・・。あれ?フラメンコが兎歩に派生だったかな?いや多分違うな。・・・まあその辺曖昧ですが。
とりあえず狂言の小舞は狂言の小舞です。フラメンコ違うって。

(因みに、能の仕舞と日本舞踊と狂言の小舞は、どれも同じではなく、少しずつ性質を異にしているそう。同一視しないでねvとのこと。)


これらの舞が棒縛ではどんなふうに舞われているか・・・は、観てのお楽しみ。ということでした。

演目の解説はとても良かったです。見どころも分かったし、初めての人もすっと狂言に入っていけたと思います。ただ、私としては、もうちょいネタバレは控えていただきたかったかな・・・。
先が読めてしまうと少々困る・・・苦笑。

いやしかし、今回の選曲は考えたな〜と思います。
前半は万作先生と万之介先生の「川上」という渋み深みのある面子で味わいを出して、
後半は萬斎さんと石田さんと深田さんの「棒縛」。こちらは比較的若手で明るくランナーズハイ!という感じ。。
対極的な二曲、非常に楽しませていただきましたv

この二曲は、明後日のアメリカ公演でも演じられるそうです。
あと、昨日の宮崎公演でも同様で、この時の「川上」のシテは萬斎さんだったそうです。(今日のシテは万作さん)
同じ曲でも、演者が違うと味わいも違ってくるので、萬斎さんシテの「川上」も是非観たいなぁ。

・・ここまでで--第一部 狂言講座--のレポお終い。
約30分間の講座だったのですが、非常に充実していました。


いよいよ--第二部 狂言--の始まり。
最初は「川上」。

あらすじは

吉野に住む、10年前に盲目になった男(万作先生)はその妻(万之介先生)に添って生活していたが、ある時、川上という場所に尊い地蔵菩薩があって、そこで願を掛けると目が見えるようになると言う噂を聞いた盲目の夫は、妻を置いて川上に出掛け、神様のお告げを受けて、しかも目が見えるようになって帰ってくる。
しかし、神様のお告げによると、妻とは甚だしい悪縁で、直ちに妻と別れるなら、目が見えるようにしてやるよとのこと。
夫はへいへいとお告げを受け入れてしまうんですね。
しかし当然、妻は怒り心頭。絶対別れるものかこのやろうと言う。
そうこうしているうちに夫も別れたくなくなって、その所為か、再び目が見えなくなってしまう。

だから妻も夫も悲しくて泣く。
最後には2人は結局、連れ添って生きていく、という御噺。



これは狂言には珍しく、シリアスなストーリーでした。。
夫の目がまた見えなくなって、夫婦でさめざめと泣く場面には心を打たれました・・。運命を嘆く夫婦の姿がほんとに悲しかったな。

最後に妻が盲目の夫の手を引いて、2人で去っていく後ろ姿は印象的だった。運命はこの上なく悲しいけれど、それでもふたり連れ添って生きていこう、という強さが感じられました。
切ないけれど、悲劇じゃない。そこが狂言らしいと思いました。

運命にはあらがえないけれど、
そこで潰れてしまわない。
どこまでも嘆くんじゃなくて、また歩き出す。

「川上」にはそんな強さを感じます。


それから、個人的に凄いなと思ったのは、万作さんの独り語り。
地蔵菩薩に願かけに行った先では、他の盲人も沢山来ていて、その人たちと会話をする場面があります。
しかし、その場面での演者は万作さんのみ。
つまり、相手が居ることを観客に想像させて演じる。
それが凄く上手いと思った。

考えてみれば、狂言はかなり、想像力で補う部分を有しています。
道具は殆ど使わないので、役者の身体ひとつでその「場」を作り上げる。
万作さんは神社の石段なんかないけどあるように演じるし、
周りに人なんかいないけど居るように感じさせる。

・・・そういった想像が、私にはごく自然にできてしまったのでたいして意識しなかったのですが、考えてみたら狂言って凄いです。
あの何にもない舞台で、豊かな世界が展開される。

意識に昇らなくなるくらい自然に演じてみせる万作さん・・・さすが人間国宝、です。甚だ感心。





二曲目はポピュラーな狂言である「棒縛」。
主・深田博治
太郎冠者・野村萬斎
次郎冠者・石田幸雄

とりあえずあらすじは、

2人の家来(太郎冠者・次郎冠者)を家に置いて外出する主人だが、家来が酒を盗み飲みするのが心配だから、太郎冠者の両腕を一本の棒で縛り、次郎冠者の腕を縄で縛り、手の自由を奪って、これなら酒なんか盗めないだろうという状態にしてから出掛ける。
しかしそこで屈しないのが奴ら家来の図太いところで、なんとかして酒を飲もうとする。そして、2人で協力して、飲んじゃう。

飲んでるうちに酒盛りが盛大になってきて、舞を舞ったりしてどんちゃん騒ぎをしている最中、主人が帰ってきて叱咤を受ける!



ふふふ「棒縛」は、会場に笑いの嵐を巻き起こしました、よ。
萬斎さんお茶目過ぎる!!!たのしすぎ!石田さんとのコンビネーション最高!
矢っ張り太郎冠者は天晴れでした!
酒を余りに美味そうに飲むものですから、私も飲みたくなりました(←未成年が言っちゃいけない台詞)。

「棒縛」は大変面白かった。面白すぎて泣きたくなった。(笑い泣き)

太郎冠者とか次郎冠者を見てると、
「あ、明るく生きよう!」って思えます。
酒飲みたいという欲望をちっとも抑えない、しかも知恵を絞って飲んでしまうあの図太さ、潔さ。観ていてとても気持ちが良い。(こういうのをカタルシスって言うのかな)

「川上」でさえも、最後は気持ちが明るくなったし。
「棒縛」で大仰に笑う2人の冠者にエネルギーをもらいました。。


あ、狂言講座で紹介された「舞」は、非常に面白かったですよ。。
萬斎さんの謡の声は大好きです・・。力強くて、響きがあって。
太郎冠者、次郎冠者は縛られたまま舞いますから、その動きはもう滑稽でした(笑)
でも、それでも「ああ、あの小舞だ!」って分かる程度に、ちゃんと原型はとどめているから感心。どんな変な動きをしても、基本は押さえてあるからカオスにはならない。
石田さん次郎冠者の「七つ子」、萬斎さん太郎冠者の「暁」、どちらも面白かったのですが、決めるとこはしっかり決まってて、縛られていてもなお、構える姿が格好良かった。。(全体的には笑いの要素のが強かったけれど)

あそうそう。
装束について触れていませんでした。
「棒縛」では、今回ちょっとした発見があったのですよ。

参考までに、装束について↓
http://www.mansaku.co.jp/galleryf.html


太郎冠者と次郎冠者は、2人とも肩衣を着ていたのですが、
その肩衣の柄って結構素敵なデザインなのですよv
デフォルメされた大きめの柄で、今回は

萬斎さん(太郎冠者)の肩衣が、紺地に白い羽を広げた鳥が一羽大きく背中に描かれている柄。
石田さん(次郎冠者)の肩衣が、紺地に白い船の帆が幾つも並んでいる柄。

でした。
(因みに萬斎さんは袴は水色、上は青っぽい格子柄の縞熨斗目(しまのしめ)で紺の肩衣。石田さんは辛子色の袴に緑色の格子柄着物に紺の肩衣。)

そして、太郎冠者は、両手を広げた形で、棒に両手首を縛られてしまいます。
次郎冠者は、両手を背中で組んだ形で、両手首を縄で縛られてしまいます。

要するに何が言いたいかというと、
太郎冠者の両手を広げた格好が、背中の白鳥のシルエットに重なる。
次郎冠者の両手を後ろで組んだ格好が、船の帆のシルエットに重なる。(すぼまった感じ?)

・・と、言葉で説明しても伝わりにくいですが、衣装にもこだわりがあるんだろうなということです。シルエットを重ねたのは意識的なんじゃないかな。。





・・・ということで、非常に楽しかったです。万作の会。
席も舞台に近くて良い席だったし、「川上」でちょっとシリアスになって、「棒縛」でランナーズハイ、沢山笑ってすっきり発散して帰ってきました。
とても充実していたな・・。

一緒に観に行った母は、最後の演目である「棒縛」が終わった後、
あんなに拍手は盛大なのにアンコールがないのは物足りない
と言ってました。

・・その通りなのですが、それが狂言というものですから。。

でも、実際に劇場で観るということは本当に価値があると思います。
そこには、映像・音声にはない迫力があります。
演者のエネルギーも伝わってきますし、何より、今この瞬間、自分と演者が空間と時間を共有しているこの素晴らしさ!!!

萬斎さんの声を直に聞くことができたのは至上の幸福。
以前、ラジオで萬斎さんの独吟を聞いて魅了されたのですが、その美しき謡が沢山聴けて嬉しかった・・。ほんとに選曲良いですよv


最近は萬斎さんを「鞍馬天狗」でばかり見ていましたが、
今日の萬斎さんは、鞍馬天狗の時と顔が違う!と思いました!
別人にさえ思えましたよ。影武者か!?・・・とは思いませんでしたが。

おそらく、「鞍馬天狗」は演じているからなのでしょうね。
演じていると平生とは貌が変わってくるから。

今日の萬斎さんは「狂言師の貌」でした。
素敵だったな。



野村狂言座の皆様、多忙スケジュールの中お疲れさまでした・・。



嗚呼、良い時間だった!
posted by 真禅寺忍月 at 01:19| ☁| Comment(2) | TrackBack(1) | 狂言 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは!
生萬斎さん素敵でしたね^^
ドラマや時代劇の萬斎さんも良いですがお舞台は格別。
やはりホームが一番輝いて見えますね☆

日本の伝統芸能、特に「能・狂言・文楽」は想像力をかきたてられます。
見えてもないものとする、なくても見えてくる。
日本ならではの鑑賞の仕方ですね!
Posted by yuu at 2008年02月15日 00:51
>yuuさん
矢張り舞台の臨場感に勝るものはございませんね・笑
(天狗の目力も負けず劣らずですが・・)

yuuさんは左サイドだったそうですね^^
私は右サイドでしたので・・お互い、正反対の位置にいたようです・苦笑

>>日本の伝統芸能
そうですね。間の美学・・・というのでしょうか。
能、狂言、文楽はとても崇高なものに感じられます。
私は狂言中心に鑑賞していますが、能や文楽も是非観てみたいですね〜。。
Posted by 真禅寺 at 2008年02月17日 16:48
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